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ゆき
雪
楠田 匡介
「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页
「望月が、何か金の事で、ご主人に気まずかったとか、聞いていましたが?」
「ええ主人がなくなれば、五千円程の退職金をあげる事になっていましたが……まさか、望月さんがそれ位の金であんなだいそれた事をなさるとは思われません。でも、この正月に主人の金を少し使ったり印鑑を利用したりしましたので、たたき出すんだといって、松の内でしたけれど打ったりした事などもありました」
「ほう、打ったりね……」と警部は思わず顔をあげた。
「それに伊東さんや……何十年ぶりかでお会いした五十嵐さんにまで、ひどく不しつけな事をいいまして聞いていましてもはらはらする様な事が、再三ございました。その点で主人は……」とさすがに後は続けなかった。
警部は一ぷくつけながら、
「あの夜書庫に、入られてから後はご主人は一度もお出になりませんでしたでしょうか?」
「ええ、出られなかったと思います」
「あなたはあの夜、書庫にはお入りになりませんでした?」
「入りませんでございます」
「ご主人が書庫に入ってからの事はお判りになりませんでしょうね?」
「ええ伊東さんが、一度入られましたがすぐ出て来られた様でした」
「入ったのは伊東さんだけでしょうか?」