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ゆき

雪

楠田 匡介

「探偵新聞」1948(昭和23)年5月5日号、5月15日号、5月25日号、6月5日号、6月15日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,792 字 · 50 页

青空文庫

半年雪の中にいる人々には、この時たまの太陽のおとずれは何よりもうれしかった。

「寒いのでこんがらがるって?」

「え、それで、とんでもない罪を作ったものですよ」と警部はふと広瀬医師の方を向いて「ああ、先生、先日は失礼しました」

「あっははは、広瀬先生はさっきからいられるよ」

「解決が、つかったようで……」と広瀬医師はいった。

「ええ」と警部はふくみ笑いしながら、テーブルの上に一枚の大きな紙を出し、いつもの癖で、それに短く要領を、書きながら、寒夜の殺人事件の真相の説明を始めて行った。

「先ず、あの夜、早川の家に寝泊りしていた三人の男達の外に容疑者として、新しく一人の男が、浮びあがったという事です」

「え! 誰です。それは?」

「高沢寺のお上人……山村常顕師ですよ」

「山村ですって!」と検事はいったが、「だって君、山村の帰った時はまだ早川は生きていたよ」

「ええ、生きていた……と思われていました。生きていたというのは、只状況からの推定で、それを研究するものは、何もないのです今迄は」

「だってランプは、二時までついていた。ね広瀬先生?」と検事は、広瀬氏をかえり見て訊いた。

「え! 二時まではついていました」