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ゆきくるまえのこうげんのはなし

雪くる前の高原の話

小川 未明

「童話」コドモ社、1926(大正15)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,024 字 · 10 页

青空文庫

そして、働くのです……。」といいました。

石炭は、ふいにレールがそういったので、輝く目をみはりました。

「私たちは、工場へゆくんですか? そんなようなことは山にいる時分から聞いていました。それにしても、なるたけ、遠いところへ送られてゆきたいものですね。いろいろな珍しいものを、できるだけ多く見たいと思います。それから私たちは、どうなるでしょうか……。知ってはいられませんか?」と、石炭は、たずねました。

レールは、考えていたが、

「あなたがたが、真っ赤な顔をして働いていなされたのを見ました。そのうちに、見えなくなりました。なんでも、つぎから、つぎへと、空へ昇ってゆかれたということです。考えると、あなたがたの一生ほどいろいろと経験なさるものはありますまい。私たちは、永久に、このままで動くことさえできないのであります。」と、レールはいいました。

石炭は、トロッコに揺られながら考え顔をしていました。なんとなく、すべてをほんとうに信ずることができないからでした。

そのとき、かたわらの赤く色づいた、つたの葉の上に、一ぴきのはちが休もうとして止まっていましたが、トロッコの音がして眠れなかったので、不平をいっていました。