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ゆきのシベリア
雪のシベリア
黒島 伝治
1927(昭和2)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,276 字 · 19 页
交代兵は来た。それは、丁度、彼等が去年派遣されてやって来たのと同じ時分だった。四年兵と、三年兵との大部分は帰って行くことになった。だが、三年兵のうちで、二人だけは、よう/\内地で初年兵の教育を了えて来たばかりである二年兵を指導するために残されねばならなかった。
軍医と上等看護長とが相談をした。彼等は、性悪で荒っぽくて使いにくい兵卒は、此際、帰してしまいたかった。そして、おとなしくって、よく働く、使いいゝ吉田と小村とが軍医の命令によって残されることになった。
二
誰れだって、シベリアに長くいたくはなかった。
豪胆で殺伐なことが好きで、よく銃剣を振るって、露西亜人を斬りつけ、相手がない時には、野にさまよっている牛や豚を突き殺して、面白がっていた、鼻の下に、ちょんびり髭を置いている屋島という男があった。
「こういうこた、内地へ帰っちゃとても出来ないからね。――法律も何もないシベリアでウンとおたのしみをしとくんだ。」
彼は、よく軍医や看護長に喰ってかゝった。ある時など、拳銃を握って、軍医を追っかけまわしたことがあった。軍医が規則正しく勤務することを要求したのが、癪にさわったというのであった。