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ゆきのやどり
雪の宿り
神西 清
「文藝」河出書房、1946(昭和21)年3、4月合併号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,995 字 · 51 页
願阿弥陀仏と申されるお聖は、この浅ましさを見るに見兼ねられて、義政公にお許しを願って六角堂の前に仮屋を立て、施行をおこなわれましたが、このとき公方様より下された御喜捨はなんと只の百貫文と申すではございませんか。また、五山の衆徒に申し下されて、四条五条の橋の上にて大施餓鬼を執行せしめられましたところ、公儀よりは一紙半銭の御喜捨もなく、費えは悉く僧徒衆の肩にかかり、相国寺のみにても二百貫文を背負い込んだとやら。花の御所の御栄耀に引きくらべて、わたくし風情の胸の中までも煮えたつ思いが致したことでございます。
このような天災地妖がたび重なっては、御政道は暗し、何ごとか起らずにいるものではございません。応仁元年正月の初めより、京の人ごころは何かしら異様な物を待つ心地で、あやしい胸さわぎを覚えておりましたところ、果せるかなその月の十八日の夜、洛北の御霊林に火の手は上ったのでございます。
尤もわたくしは二三日前より御用で近江へ参っておりまして、その夜のことは何も存じません。御用もそこそこに飛ぶように帰って参りますと、騒ぎは既に収まって、案外に京の町は落着いております。