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ゆきのはなし

雪の話

寺田 寅彦

「東京朝日新聞」1908(明治41)年4月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,890 字 · 4 页

青空文庫

雪は豊年の貢

火星の雪

ところが極北に近い終年雪の絶えぬ処では時として赤い雪や緑の雪が見られる。これは雪の中に生きている微細な藻類のために色が着いているのだそうな。

雪は豊年の貢

雪は豊年の貢と云って作物のためになると称せられている。冷たい物が地面に降って作物の害にならぬのはちょっと考えると不思議だが、それはこういう訳らしい。冬の晴れた夜には地面は盛んに温熱を放散して冷却し、雪などに比べては遥かに低い温度に下がって土は凍って作物の芽も凍死する事があるが、雪で蓋をするとこの過度の冷却を遮られ却って凍死を免れるのである。

火星の雪

ついでにこれは少し吾々人間に縁遠い話だが、火星の南北両極に当って白い処が見える。この白い部分が時期によってあるいは大きくあるいは小さく消長するので、これは多分我が地球と同様に両極は雪で蔽われているのだろうという事になっている。その大きさの消長するのは夏冬で雪が解けたり積もったりするためらしい。(明治四十一年四月十日『東京朝日新聞』)