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ゆきのふったひ
雪の降った日
小川 未明
「お話の木」1938(昭和13)年2月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,110 字 · 11 页
きよは、困ってしまいました。障子の破れからのぞくと、子供は、病気とみえて、床について、ねていました。そのまくらもとには、片方の車のとれたタンクが、ころがっていました。さっき、これがびっこを引きながら、動いていたのでありましょう。
きよは、しかたなく、自分で障子を開けたのです。
「お母さんは、おかせぎにいらしたの?」と聞くと、子供は、だまって、上を向きながら、うなずきました。
「ひとりで、おるすい?」
「僕、かぜをひいたので、ついていかなかったの。」と、子供は、答えました。
さびしい家のようすを見ると、火の気もない三畳の間に、子供は、独りでねているのでした。きよは、かわいそうになりました。
「こんどくるときに、いいおもちゃを持ってきてあげますよ。」というと、子供は、このまったく知らぬお姉さんの顔を、不思議そうにながめていました。それでも、やさしくいわれたので、なつかしく感じたのか、さびしく笑っていました。
「奥さま、ただいま。」と、きよは、お家へ帰ると、お母さんの前で頭を下げました。そして、自分の見たことを、話したのでありました。そばでこの話をきいた年ちゃんには、――いつか、雪の降った日に、くつ下をはかずに、破れたくつをはいて、車のそばに立っていた、子供の姿が、目に、ありありと浮かんだのであります。