轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
くものこみち
雲の小径
久生 十蘭
「別冊少年新潮」1956(昭和31)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,634 字 · 33 页
「ひどく、しみじみとしていやがる」
とつぶやいた。
とりとめのない、こういう灰色の風景は、悩ましい、胸をえぐるような、そのくせ、なつかしくもある痛切な心象につながっている。香世子がこの世から消えてしまったのは、もう三年前のことだが、まだその影響からぬけきれずにいる。白川も、これでは困ると思うのだが、いちど焼きついた心象は、払えば消えるというようなものではない。
十二月二十五日の朝、市兵衛町の交番から電話の通達があった。
「奥さんが、交通事故で亡くなられたそうで、そちらへおしらせするように、築地署から通達がありました。死体は聖路加にありますから、印鑑を持って、すぐ引取りに来てください」
「ちょっと、もしもし……それは、なにかのまちがいでしょう。私には家内なんかありませんがね」
「二号でも三号でもいいですが、ともかく、すぐ来てください」
雲の低く垂れた雪もよいの朝がけ、白川が聖路加へ行ってみると、ハンドルのかたちに、胸に丸い皮下溢血の血斑をつけた二宮の細君の香世子が、窮屈そうに屍室の寝棺におさまって、眼をつぶっていた。
クリスマス・イヴの十時すぎ、酔ったいきおいで築地のほうへ車を飛ばし、四丁目の安全地帯にぶっつけた。