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うんなんしゅびへい

雲南守備兵

木村 荘十

「新青年」1941(昭和16)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,859 字 · 76 页

青空文庫

陽は、もう丘の稜線に沈み懸って、陰欝な雲の裂目から、鉱区の一部をあの血の様な色に染めていた。

孫永才は、びくっと頭を起した弟に小突かれて顔をあげた。

赤い陽を浴びている丘の斜面に、二人を蔽うような大きな人の影が写っている。

「誰だッ」

永才は声と共に振り返った。

「わしだよ、さっきの飯店にいた親爺だよ」

老人が丘の上から答えた。

「お前は俺を尾行して来たのか」

老人は、答える代りに手に紙包をぶらさげて静かに下へ降りて来た。彼の永才を見る眼は、心の底まで見透しているように静かだった。

「一体お前さんは、誰なんだ」

「この丘の向うで、錫をとっている者だよ」

「なに、鉱山主だと」

永才の油断のない眼が、鋭く老人にそそがれている。

「いや、いや、錫をとると云ってもな……わしのは、その子と同じように鉱山で怪我をした盲目の子供と二人でやっているのだ……」

「…………」

「わしの鉱山には坑道もなにもないが、それでも竈くらいの熔鉱炉もある……それで結構二人や三人が食べるのに不自由はない……月に何度か、ほら」

老人は、脂の滲み出した紙包を振って見せて、

「あの飯店へ行って、こうして子供に土産を買ってくるのが楽しみなのだ……若い人、短気はいけませんよ……暮しようは色々ある……幸などというものは、その人々の考えようにあるのだ」