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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

というので、まず立ち上って狼狽を始めたのは前科四犯の真々川化助だった。彼はグッタリしている松吉を助け起してその胸ぐらを一と揺ぶりして、呼吸のあるのを確めた上、裏口から飛鳥のように逃げだした。

「……松さんは、居ないのかア。……」

四郎は、また怒鳴ったが、どうやらそれはわざとらしかった。

「……へえい。松吉は居りますです」

はだけた前から膝小僧の出ているやつを、一生懸命に隠そうとしながら、松吉は狼藉をつくした一間の真中に、声のする方を向いて畏まった。酔もなにも、一度に醒めてしまった恰好だった。

そこへ北鳴四郎が、ヌッと這入ってきた。

「おい松さん。酒は仕事が済めばいくらでも呑ませる。それまでは呑むなといっといたじゃないか」

「へへい。……へえい。……」

と、松吉はペコペコ頭を下げ続けた。

「……さあ、明朝から、いよいよ次の仕事だ。それについて話をしたいが、そんなに酔っていては、話どころの騒じゃない。……私は家に待っているから、醒めたところで直ぐ来い。いいか、今夜はいつまでも起きているからネ」

そういうと、恐縮しきっている松吉を尻目にかけて、北鳴は宿の方へ帰っていった。