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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

「おお、荘厳なる雷よ! さあ、万丈の天空より一瞬のうちに落下して、脳天をうち砕き、脾腹をひき裂け!」

彼はこの世の人とも思われぬ、すさまじい形相をして、恐ろしい呪いの言葉を吐いた。

そのときだった。

紫電一閃!

呀っと叫ぶ間もなく、轟然、地軸が裂けるかと思うばかりの大音響と共に、四郎の乗っている櫓は天に沖する真赤な火柱の中に包まれてしまった。

北鳴四郎の身体は、一瞬のうちに一抹の火焔となって燃え尽してしまったのである。

×   ×   ×

丁度その頃、お里の兄の雅彦は、下り列車が比野駅構内に入るのも遅しとばかり、ヒラリとホームの上に飛び下りた。それから、改札口を跳び越えんばかりにして、駅の出口に出たが、なにしろ物凄い土砂降りの最中で、声をかぎりに呼べど、俥もなにも近づいて来ない。彼は地団太を踏みながら、その手には妹から来た手紙をシッカリ握りしめていた。

「ああ、妹たち夫婦は、この雷鳴の中に、もう死んだに違いない」彼は呻くように云った。「北鳴四郎というやつは、八つ裂にしてもあき足らぬ悪漢だ。彼はおれの書いた落雷の研究報告を悪用して、あの恐るべき殺人法を思いついたのだ。