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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

二人の争論を聞いていた高村町長は、横から口を出して、

「オイ松吉。北鳴さんは、博士にもなろうという方じゃないか。ちと口を慎むがいい。それに、お前の仕事のなっとらんことは、この町で知らぬ者はないぞ。わしはこの火の見梯子をお前に請負わせるようになったと聞いて強く反対したのじゃが……」

松吉は、苦がりきって、ひとりでスタスタと歩きだした。

3

翌朝から、北鳴の依頼によって、松吉の請負い仕事が始った。それは比野町の勢町というところに、高さ百尺の大櫓を二ヶ所に建てるという大仕事だった。

その工費は全部で六百円。この仕事が済めば松吉の懐中には、少なくも三百円の現金が残るはずだった。その上、北鳴の実験が済んでしまえば、この櫓に使った杉の丸太は、すべて松吉の所有になる約束だったから、なんのことはない、人夫の手間以外は、まる丸儲けの形だった。

「やあ、北鳴の四郎さんじゃありませんか。これはお久しゅう」

といって、工事を指図している北鳴のところへ近づいてきた商人体の老人があった。

「ああ、私は北鳴ですが貴方は誰方でしたかナ」

といって、北鳴は藤の洋杖の頭についたピカピカする黄金の金具を撫でながら、訝しそうに応えた。