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かみなり

雷

海野 十三

「サンデー毎日 秋期特大号」毎日新聞社、1936(昭和11)年9月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,706 字 · 40 页

青空文庫

だがその言葉の語尾は、なんとなく怪しく慄えを帯びていた。

「……ああ、お忘れになったも無理はない。私は五年前からひどい腎臓を患うたもので、酒と煙草とを断ち、身体は痩せるし顔色は青黒くなるし、おまけに白髪が急に殖えてきて……とにかく姿は変りましたが、稲田仙太郎ですわい」

「稲田仙太郎?……ああ稲田のお父っさんでしたか」

「稲田のお父っさん?……おお、よく云って下すった。お父さんと今でも呼んで呉れますかい。それでは貴方はこの私を憎んではいなさらぬのだナ。ああ私はどんなにか安心をしましたわい。……北鳴さん、立派になられたなア。こんなに立派になられようとは、遉の私も全く思いがけなかった」

「はッはッはッ。なにを仰有います。……」

北鳴は身を後へ反らせながら、晴れやかに笑った――つもりだったが、その高らかな声の中に依然たる空虚な響の籠っているのが隠せなかった。

「……聞けば、博士論文を書くため、この町へ帰って来られたそうだが、この高い櫓も、その博士論文の実験に使うとかいう話を聞きました。私の家の二階からは、丁度この二つの櫓が、よく見えるので……どっちも私の家から丁度同じ位の距離ですナ……それで御機嫌伺いかたがたやって来ましたが、仕事のお閑には、ぜひ家へ寄って下さい。