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でんきかんばんのしんけい

電気看板の神経

海野 十三

「新青年」博文館、1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,480 字 · 29 页

青空文庫

兎も角も春江惨殺の夜の岡安の行動には、尚いくぶんのうたがいが残されている。又、彼が、何故に、この寒い二時三時という深夜にひとり起きいでて屋上に立ち、カフェ・ネオンの電気看板を眺めくらしているものか、これについて岡安の語るところによると、春江と電気看板の点滅を合図に逢瀬を楽しんでいたことが忘れられず、今は鈴江と仲のよくなった今日も、毎晩のように十三丁も遠方から、あの桃色のネオン・サインをうっとり見詰めていたそうで、そうした生活が、なにより、彼にとって楽しい時間であり、寒さもなにも感じないと答えた。

そこでいよいよ取っておきの話をするが、実はカフェ・ネオンの惨劇の犯人と目される春吉と鈴江の関係について、僕が知っていることがある。鈴江は自分の惚れている岡安と情人たる春江とのよい仲に極度の嫉妬をおこし、二人の逢瀬が度々屋根裏の物置で行われているのを知ったもので、とうとうたまりかねて、春江を殺す決心をした。彼女はだれにも洩らさなかったが昔、××電気会社で高圧係の女工だった関係で電気の取扱い方を知っていたので、それを利用したというわけだ。兇行前、同室に熟睡中の同僚を麻睡薬を嗅がせてよく睡らせてしまい、兇行後には自分もみずからこの薬の力を借りて熟睡に陥り巧みにみんなの眼をごまかしていたものである。