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でんきぶろのかいしじけん

電気風呂の怪死事件

海野 十三

「新青年」博文館、1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,788 字 · 34 页

青空文庫

「みなさん、お客様はもう死んでしまったんですか?」

「助かるだろうというんですがね、まあ早く蒲団を持ってってやんなさい!」

だが、女房はその扉口に近く、警官や刑事らしい人々が数人、ひどく難しい表情で突立っているのを認めると、何故か心怯えてゆく気にはなれなかった。

「すみません、ちょっと此処を開けて下さい!」

女房は、傍の人に声をかけて、女湯の扉口を頤でしゃくってみせた。

無言で開けられた扉口から一歩、女湯の方へ足を踏み入れた彼女は、又も思わず「吁ッ!」と叫んだ。

その声にはっと反射的に此方を向いた扉口の連中は、「おやッ!」と、ひとしく目を瞠った。

「お、女湯にも、大変です! 女湯にも人が、人が……」

タイル張りの流し床に蒲団を放り出した女房が、こう叫んだのは、すべて計ることの出来ない瞬間のことである。

男湯の方の出来事に注意を鳩めていた警官連や他の男達は、どっと、その声に誘われて女湯の方へ雪崩れ込んで来た。

司法主任の赤羽直三氏の蒼白な顔が、何時の間にか交っていた。

「おお! こりゃ兇器で殺られてる。みんな傍へ寄っちゃいかん! 大変だ。君、急いで手配をして見張って呉れ給え!」