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れいかん

霊感

豊島 与志雄

「中央公論」1952(昭和27)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,268 字 · 31 页

青空文庫

一つはすぐに分りました。相良家の屋敷の隅に、小さな稲荷の祠がありました。石を畳んだ土台の上に、木の御堂が立っております。戦災当時は樹木の茂みにでも護られたかして、焼け残ったのでしょう。その樹木もあらかた燃料に切られたらしく、今では雨曝しになっていました。そしてただうち捨ててありました。

も一つは、今は残っていませんでしたが、聞き合せて分りました。分譲地一帯は、ゆるい傾斜面になっていまして、今井さんの下手の家を建てる時分、そこに大きな樹の切株があったそうです。建築をするため、地ならしをする時、切株は取り除かれたのでした。

A女はその話を注意深く聞き終ってから、小首を傾げました。

「それだけですか。」

「ええ、二つとも確かにありましたわ。」

「も一つある筈ですがねえ。」

「どんなものですの。」

「なにか、捨て去られたもののようです。」

「それでは、も一度行って調べてみましょう。」

村尾さんはしみじみとA女の顔を見守りました。

「でも、まったくふしぎねえ、あなたにどうしてそんなことがお分りになりますの。」

A女はさりげなく笑いました。

「じつは、いくらか信仰の道にはいったことがありまして、今も修業は続けておりますが、なかなか思うようには参りません。