轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
きりのなか
霧の中
豊島 与志雄
――「正夫の世界」――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,920 字 · 40 页
掌にすいつく紙は彼が考え出したもので、奇術と飲料との混血児だった。
その宮川のところで、南さんはその晩、二三の知人と共に、怪しげなカクテルを飲み、宮川の奇術を見、更に紙の実験をしたのである。その時誰かが、掌に紙がすいつくのは、薬品のせいばかりでなく、精神力も多少働くのではないかといい出し、それがきっかけで、酔余の競争が始まった。どういう薬品か、宮川はそれを秘密にしているが、紙の上に掌をかざしていると、掌の温度が紙にぬられている薬品に作用して、そこに化学的変化が起り、紙は掌の方へすいあげられるのである。随って、掌と紙との距離が近いほどよく、五センチと離れてはうまくいかない。それを、煙草一本ほどの距離でやってみせると、南さんは主張し出し執拗に努力してみた。精神力の支持者となったのである。敷島一本の長さを八センチ半とすれば、それだけの上から化学作用に精神力を加えて紙をすいあげるというのだ。用意の紙を何枚も出させ、額に汗を浮かべて、夢中になって手を差伸してるところは、正気の沙汰とは思えなかった。しまいには腹を立て、先に失敬するといいすてて、一人で出て行ってしまった。