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きりをけすはなし

霧を消す話

中谷 宇吉郎

「思想」1945(昭和20)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,903 字 · 16 页

青空文庫

その微水滴の全量は案外少なく、英国の濃霧でも大気一立方メートル中に一グラムくらい或いはそれ以内の水が存在している程度である。それで熱を与えて大気を少し暖めてやれば、この霧粒は蒸発して霧が消えるのは当然である。また大気を暖めなくても、何か塩化カルシウムのような吸湿性の化学薬品を撒布して、大気中の水蒸気を吸収させ、空気を乾燥させてやっても、霧粒はやはり蒸発するはずである。

ハウトン等は一九三七年頃即ちチャーチルの宣言よりも五年前に、この後の化学的方法を用いて、飛行場の霧を消す実験をした。用いた薬品は塩化カルシウムが主であった。結果は中位の成績で、相当大規模な装置をして、大仕掛の実験をしてみたが、霧は大分薄くなったという程度であった。初め三百メートルか四百メートルくらいしか先が見えなかったのに、この方法を施したら霧が少し薄くなって、七百メートルくらいまで見えるようになったという程度の効果に過ぎなかった。この程度ではすぐ実用にはならないが、しかし霧の人工消散は幾分は出来たことになる。それでハウトンは学会の賞か何かを貰って、それでこの方はおしまいになってしまった。