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せいしゅんのぎゃくせつ
青春の逆説
織田 作之助
在线阅读織田 作之助《青春の逆説(せいしゅんのぎゃくせつ)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,593 字 · 325 页
「えっ?」佐古は「げっ」と聴えるような声を出した。
「私、これでも随分辛抱したもんですわ。最初の一晩でじつはやめさせていただきたかったんです」それは約束がちがうという佐古の顔へ、多鶴子はにやりと微笑を投げかけて、「……いいえ、最初の二晩で、……」と、言った。
佐古ははっとした。多鶴子は続けて、
「あの晩あんなことがございましたし、……私よっぽどあれきりお店へ出るのよそうと思ったんですけど……」
佐古の顔をまじろぎもせずに見つめながら、待合へ連れ込まれようとした晩のことを徐々に持ち出した。佐古は引き下らざるを得なかった。玄関まで見送って、
「夜分冷えますのに、御足労でした」多鶴子はそう言葉を残して、すっとなかへ消えてしまった。
佐古は莫迦にされたような気持でぷりぷりした。多鶴子があんなに周章てて奥へはいったのは、誰かが待っているためだろうと思うと、一層腹が立った。佐古の想像通りだった。豹一が待っていたのである。
佐古を追っぱらったあとの応接間へ多鶴子が再びはいって来ると、いままで佐古が腰かけていた椅子に豹一がいて、多鶴子が食い残したチョコレートをむしゃむしゃ食べていた。