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しずかなにちよう
静かな日曜
宮本 百合子
「読売新聞」1924(大正13)年1月24、25日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,490 字 · 4 页
十三日。
おかしな夢を見た。
ひどくごちゃごちゃ混雑した人ごみの狭い通りを歩いていると右側に一軒魚屋の店が出ていた。
男が一人鉢巻をし、体をゆすって、俎の上に切りみを作っている。立って見ていると表面の黒いかたまりにさっと庖丁を渡*、二つにひろげてぽんと、何と云うかどっさり魚を並べてある斜かいの台の上に放り出した。
「何の肉です?」
誰かがはっきり訊いた。
見えない人の声が、威めしい声で、
「烏の肉だ」
と云う。私は何故魚屋に烏の肉などがあるのか、烏らしい羽毛も見えないが、成程、黒いには黒い、真黒だ。と考えながら段々歩いて行く。
いつの間にか私のとなりにつれ立って良人も歩いている。感じで判っているが姿も声もしない。砂ばかりの海岸近くの処に出た。ハッピを着た大工が彼方此方し鉋や金槌の音が賑かで、家の普請をやっている。真新しい柱や梁の白木の色が、さえない砂の鼠色のところに際立って寒く見えた。
私共は、通りぬけて砂丘の間を過ぎ、広い波打ちぎわまで余程の距離のある海辺に出た。寂しく、風があり、寒い。左手はずっと砂丘つづきで、ぼんやり灰色にかすんでいる。其方の方に向って、私の家の女中が一人で一生懸命に走って行く姿が小さく見える。