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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

03 都鳥

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,604 字 · 28 页

青空文庫

「ほんに、これは、都鳥」

「ちょっと見には、経すくいの織疵のようにも見えるが、よく見ると、けっしてそうじゃない。……経緯を綾にして念を入れて織り出したものだ」

「そうですよ」

「……妙なこともあるもんだ。支那に都鳥がいるなんてことはきいたこともない。水鳥はいようが、こんな光琳風の図柄などを知っているはずがない」

ひょろ松は、うなずいて、

「ほんに、そうです」

「どうも、こりゃア、日本人が織ったものとしか思われねえの。……ひょっとすると、長崎屋の呉絽にはなにかいわくがあるぜ……番頭が帰って来ない間に、三人で手分けして、みんなあらためて見ようじゃないか」

花世は、きっぱりした顔つきになって、

「ようござんす。やって見ましょう」

さすがに吟味方の娘だけあって、こんなことはのみこみが早い。束にして、ズルズルと縁先へ帯地を引きずってゆき、帯の両側を手早くたぐりかえしながら、あらためていたが、

「……どうも、こっちには見えませんよ」

ひょろ松のほうにも見当らないので、

「こちらにも、ございませんね」

「……すると、あれ一本きりだったのか。……はて、いよいよもって奇異だの……なんのつもりで、骨を折ってあんなものを織り出したんだろう」