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あごじゅうろうとりものちょう

顎十郎捕物帳

久生 十蘭

03 都鳥

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,604 字 · 28 页

青空文庫

そこへ番頭が帯地の巻物を抱えて帰ってきた。

三人は三方から引っぱり合って、さり気なくあらためて見たが、今度のぶんにも、やっぱり都鳥の織出しは見つからない。

花世は、またいずれといって、長崎屋の番頭をかえすと、気味悪そうに眉をひそめ、

「どんなわけがあるのでしょう……わたしア、なんだか、こわらしくなって来ましたよ」

といっているところへ、小間使に案内されて、お琴が入って来た。

春木町の豊田屋という大きな袋物屋の娘で、花世の踊の朋輩。京人形のような顔をした、あどけない娘で、顎十郎とはごくごくの言葉敵である。

すぐ、顎十郎のそばへ行って、

「オヤ、阿古十さん、こんにちは。……こないだは、よくもおきらいなすッたね。……ひとが、せっかく緋桜の枝を持って行ってあげたのに、木で鼻をくくったようなあいさつをしてさ。……きょうは、かたきをとッてあげるから、おぼえておいでなさいましよ」

花世は瓶子と盃を雛壇からとりおろして来て、お琴の前におき、

「さア、しっかりおしな。……わたしがあとおしをしますよ」

顎十郎は、腕を組んでなにか考えこんだまま返事もしない。

お琴は瓶子と盃を持って立ち上ると、呉絽の帯をサヤサヤと鳴らして顎十郎のほうに行きながら、