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かぜとひかりとはたちのわたしと
風と光と二十の私と
「文芸 第四巻第一号(新春号)」1947(昭和22)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,154 字 · 30 页
満足は誰でも好むよ。けだものでもね」
本当だろうかと私は思った。私はともかくたしかに満足には淫していた。私はまったく行雲流水にやや近くなって、怒ることも、喜ぶことも、悲しむことも、すくなくなり、二十のくせに、五十六十の諸先生方よりも、私の方が落付と老成と悟りをもっているようだった。私はなべて所有を欲しなかった。魂の限定されることを欲しなかったからだ。私は夏も冬も同じ洋服を着、本は読み終ると人にやり、余分の所有品は着代えのシャツとフンドシだけで、あるとき私を訪ねてきた父兄の口からあの先生は洋服と同じようにフンドシを壁にぶらさげておくという笑い話がひろまり、へえ、そういうことは人の習慣にないことなのか、と私の方がびっくりしたものだ。フンドシを壁にぶら下げておくのは私の整頓の方法で、私には所蔵という精神がなかったので、押入は無用であった。所蔵していたものといえば高貴な女先生の幻で、私がそのころバイブルを読んだのは、この人の面影から聖母マリヤというものを空想したからであった。然し私は、あこがれてはいたが、恋してはいなかった。恋愛という平衡を失った精神はいささかも感じなかったので、せめて同じこの分校で机を並べて仕事ができたらいいになアと、私の欲する最大のことはそれだけであった。