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ふうちそう

風知草

宮本 百合子

「文芸春秋」1946(昭和21)年9~11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 44,107 字 · 88 页

青空文庫

公判廷でみたときよりももっとやせて、一層角のついた正八角形という顔の感じである。ひろ子は、その手を執って挨拶した。さっきの男二人は、入れちがいに出てゆき、重吉が、

「弁当もって来たかい」

ときいた。

「御一緒にたべたら?」

「僕はあるんです」

そのひとは、握り飯を出した。重吉とひろ子は弁当箱をあけ、鰯のやいたのを三人でわけて板テーブルの上で食事をはじめた。まだ湯をわかす設備もなかった。

そして、食べているところへ、一人新聞記者が入って来た。その記者は重吉とうち合わせてあった用向きについて事務的に話してから、煙草に火をつけ、世間話をはじめた。

「この間うちから僕は徳田さんにも会ったし、志賀さんにも会えたんですが、袴田里見さんていうのは、一体どんな人です? どうにも会えないで残念なんだが」

ひろ子は、ひどく面白がった眼つきで重吉を見た。重吉はおかしそうに笑っていたが、一寸となりを見てから、

「すぐ近くにいますよ」

と云った。

「え? じゃきょう会えますね」

「ここにいるのが、同志袴田です」

記者の真向いで鰯をかじっていたひとが、

「やあ」

と、笑い出した。

「どうも――これは……」