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しゅせきとばっせき
首席と末席
佐々木 邦
「雄弁」大日本雄辯會講談社、1927(昭和2)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,378 字 · 15 页
半年たって卒業試験が来た。寺島君は随分勉強していたが、時折、
「迚も駄目だ」
と弱音を吹いた。
「そんな馬鹿なことはないよ。末席だって点数さえあれば必ず卒業する」
と私は親しい間柄だから絶えず激励していた。寺島君もその気になって試験を受けたが、成績発表の朝、
「駄目だったよ」
と言って私のところへ駈けつけた。
「冗談じゃないぜ」
と私は掲示板を睨んで憤慨して、早速有志数名と共にジョーンズ校長を訪れた。文明の紳士がこれほどまで迷信に左右されるとは沙汰の限りである。しかしジョーンズ博士は、
「仕方がないです。私も考えましたが、寺島君は点数が足らないんです」
と説明した。如何にも気の毒そうな語調だったから、矢張り自然の成り行きかとも思った。次いで教務の今井さんのところへ押しかけたら、
「寺島君はこの通り点数が足りません」
と言って、成績表を見せてくれた。
「しかしこれぐらいなら今までは仮及第が相場じゃありませんか?」
「卒業試験に仮及第はありません。追加及第でしょう。悪い学科が一科目きりですから、従来の慣例に従えば再試験を受けられます。それにしても卒業式の間には合いませんよ」