轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

こうでん

香奠

豊島 与志雄

「時流」1925(大正14)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,989 字 · 46 页

青空文庫

そして十月の初めに、私は夢にも思わなかったことにぶつかったのです。

母上

その時私は帝国劇場の食堂で、一人ちびりちびり酒をのんでいました。何だかひどく憂鬱だったのです。劇場の幕間の廊下の綺羅びやかな空気に気圧された気持で、自分自身が惨めに思われ、自分の日々の生活が惨めに思われて、而も頭が変にぼーっとしています。実は会社の帰りにふと思いついて、連れもなく一人で飛び込んだのがいけなかったのかも知れません。

で私は、ぼんやり食堂にはいり込んで、窓際の席に腰を下し、外のきらきらする夜景を眺めながら、一寸した料理で酒を飲んでいました。

そのうちに開幕のベルが鳴って、広間の中がざわざわ立乱れ初めましたので、私も立上ろうかどうしようかと、一寸思い惑ってる途端に、乱れた人込の中から不意に、一人の青年が真直に私の方へやって来ました。

「先生、御無沙汰しました。」

にこにこ笑いながら、頭をかいています。その顔を見て、私は全く喫驚しました。平田伍三郎だったのです。

「ああ君か。すっかり変ったね。どうしたんだい。」

すると彼は左の手で軽く頭を押えてみせました。

「お伺いするつもりでしたが、こいつのためにすっかり……。