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まにわねんりゅうのこと
馬庭念流のこと
「上毛警友 第八巻第四号」国家地方警察群馬県本部警務部、1953(昭和28)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,569 字 · 6 页
剣法というのは元来貴人に依存してきたもので、剣士は将軍や大名に召抱えられることを目標に修業に励んだものである。
ところがここにただ一ツ在野の剣法というものがあった。それが馬庭念流だ。
代々草ぶかい田舎に土着して、師弟ともに田を耕しつつ先祖からの剣法を修業し、官に仕えることも欲せず、名利ももとめない。さればといって剣を力に、徒党をくんで事をはかるようなことはミジンといえどもしたことがない。師弟ともに百姓のかたわら剣法にはげむことを先祖代々の無上の生活としていたにすぎないのである。
幕末の直前にちょッと江戸に道場を開き、千葉周作と争ったことなぞもあるが、馬庭念流の歴史のうちではむしろ異端に類する時で、その真骨頂は百姓剣法をもって天職とし、草ぶかい田舎にこもって伝統の剣法を受けつぎ楽しんで出でて名声をもとめることを知らなかったその上の数百年にあるといえよう。
講談本なぞでも、馬庭念流は他流にとって謎の剣法だ。名利をもとめないということは俗物にとっては奥ゆかしさよりも薄気味わるさが感じられるもので、またそれは実力がないせいだろうととかく俗物はそんな風に解釈したがるものだ。