轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

えきふにっき

駅夫日記

白柳 秀湖

「新小説」1907(明治40)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页

青空文庫

私がだんだん年ごろとなるに連れて叔父との調和がむずかしく若い心の物狂わしきまでひたすらに、苦学――成功というような夢に憧れて、母の膝に嘆き伏した時は、苦労性の気の弱い母もついに私の願望を容れて、下谷の清水町にわびしく住んでいる遠縁の伯母をたよりに上京することを許してくれた。

去年の春下谷の伯母を訪ねて、その寡婦暮しの聞きしにまさる貧しさに驚かされた私は、三崎町の「苦学社」の募集広告を見て、天使の救いにおうたように、雀躍して喜んだ。私は功名の夢を夢みて「苦学社」に入った。

母の涙の紀念として肌身離さず持っていたわずかの金を惜しげもなく抛げ出して入社した三崎町の苦学社を逃げ出して再び下谷の伯母の家に駆け込んだ時は、自分ながら生命のあったのを怪しんだほどである。私は初めて人間の生血を吸る、恐ろしい野獣の所為をまのあたり見た。

坂本町に住む伯母の知己の世話で私が目黒の駅に務めることになったのは、去年の夏の暮であった。私はもう食を得ることよりほかにさしあたりの目的はない。功名も、富貴も、それは皆若い私の夢であった、私はもう塵のような、煙のような未来の空想を捨てて、辛い、苦しい生存の途をたどらなければならないのだ。