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えきふにっき
駅夫日記
白柳 秀湖
「新小説」1907(明治40)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页
ああ、可憐そうなことをした!
どこからともなく襲うて来た一種の恐怖が全身に痺れ渡って、私はもう再びその菰包みを見ることすら出来なかった。昨日まであんなにしていたものを、人間の運命というものは実に分らないものだ。何という薄命な奴だろう、思うに昨夜の寒さを凌ぎかねて、焚火の燼の傍に菰を被ったままうずくまっていたところを、急に崩れ落ちて、こんなあさましい最後を遂げたに相違あるまい。
少年の事情はせめて小林監督にでも話してやろう、私は顔をあげて死骸の傍に突っ立っている逞しい労働者の群を見た。薄い冬の夕日が、弱い光をそのあから顔に投げて、猛悪な形相に一種いいしれぬ恐怖と不安の色が浮んでいる。たとえば猛獣が雷鳴を怖れてその鬣の地に敷くばかり頭を垂れた時のように、「巡査が来た!」
「大将も一しょじゃあないか」「大将が来たぞ!」と土方は口々に囁く、やがて小林監督は駐在所の巡査を伴立ってやって来た。土方は言い合わせたように道をあける。
二十二
「いい成仏をしろよ!」と小林の差図で工夫の一人がショーブルで土を小さい棺桶の上に落した。私はせめてもの心やりに小石を拾って穴に入れる。