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えきふにっき

駅夫日記

白柳 秀湖

「新小説」1907(明治40)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,989 字 · 69 页

青空文庫

黙っていた一人がこんどは横合いから盛り上げてある土をザラザラと落したので棺はもう大かた埋もれた。

小坊主が、人の喉を詰まらせるような冷たい空気に咽びながら、鈴を鳴らして読経をはじめた。

小林は洋服のまま角燈を提げて立っている。

私が変死した少年のことについて小林に話すと、彼は非常に同情して、隧道の崩れたのは自分の監督が行き届かなかったからで、ほかに親類がないと言うならば、このまま村役場の手に渡すのも可憐そうだからおれが引き取って埋葬してやるというので、一切を引き受けて三田村の寂しい法華寺の墓地の隅に葬ることとなった。もっともこの寺というのは例の足立駅長の世話があったのと、納豆売りをしていた少年の母のことを寺の和尚が薄々知っていたのとで、案外早く話がついて、その夜のうちに埋葬してしまうことになったのだ。

今夜はいつになく風が止んで、墓地と畑の境にそそり立った榛の梢が煙のように、冴え渡る月を抽いて物すごい光が寒竹の藪をあやしく隈どっている。幾つとなく群立った古い石塔の暗く、また明く、人の立ったようなのを見越して、なだらかな岡が見える。その岡の上に麦酒会社の建築物が現われて、黒い輪廓があざやかに、灰色の空を区画ったところなど、何とはなしに外国の景色を見るようである。