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こうげんのたいよう

高原の太陽

岡本 かの子

「むらさき」1937(昭和12)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,558 字 · 17 页

青空文庫

「何がですか」

「だから僕は女性でなくては……と云ったでしょう」

「…………」

かの女はあまり唐突にその言葉を聞いたように感じた。だがよく考えれば、青年がいつも女性でなければと云っていたことを、今また思い出した。

「僕はやっぱり女性の敏感のなかに理解がしっとり緻密に溶け込んでいるのでなければ、淋しい男性にとってほんとうの喜びではないと思うんです。兄さんは僕を多少ニヒリストで素焼の壺程度にさらりとした人間と解釈したに過ぎないが、あなたはそれ以上、僕に鬱屈している孤独的な寂しさまで感じわけて下さったでしょう……女性の本当に濃かいデリケートな感受性へ理解されることが、僕の秘かな希望だったんだな……」

「でもあなたは素焼の壺が二つ並んだような男女の交際が欲しいと仰ったでしょう」

「またそれが出ましたね。どうも素焼の壺が頻々と出て来ますね。あれは僕自身も僕を素焼の壺程度に解釈していた時分云ったことですよ。僕は実は大変な鬱血漢でしたよ」

「割合いに刺戟的な方だと思うわ」

「ばあやのお喋りがはいらないんで、今日はあなたがよくお話しになる、僕の本望だな。あれはね、僕、今でもそう思ってますが――つまり、すぐ恋愛になるような、あり来りの男女の交際は嫌だと思ってましたから、それがああいう言葉で出たんですが……」