轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
こうげんのたいよう
高原の太陽
岡本 かの子
「むらさき」1937(昭和12)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,558 字 · 17 页
ばあやは青年の気さくなところばかりを見ていた。
かの女が喰べて仕舞った夕飯の膳をひいて行くときに、ばあやはこう云って、かの女の箸をつけない皿を一つか二つ残して置くのであった。そして母屋の邸の台所からビールを貰って来て、青年を待った。青年は笑を含みながら大部分の時間をばあやに素直に饗応された。酒は強いらしくいくら飲んでも大して変らなかった。ただ老女中に対しては、いかにもこういう種類の女中を扱いつけているらしい態度で冗談にして愛想を云った。
「ばあやさんお酌の仕方がうまいなあ」
「むかし酒飲みの主人を持っておりましたからね」
淡々として人生をも生活をも戯画化して行く。これを江戸趣味とでもいうのであろうか。青年と老女中は、追羽子の羽根のように会話を弄んで行くが、かの女は他愛ないもののように取れて、そっと傍見をして欠伸をしてしまった。だが欠伸の後の生理的弛緩に伴う心の寂寞をかの女は自分にあやしんで見た。この青年の傍にいることは何という淋しさだろう。大都会の下町――そこにはあらゆる文化と廃頽の魔性の精がいて、この俊敏な青年の生命をいつかむしばみ白々しい虚無的な余白ばかりを残して仕舞った。