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こうげんのたいよう

高原の太陽

岡本 かの子

「むらさき」1937(昭和12)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,558 字 · 17 页

青空文庫

恰も自家中毒の患者を見るような憐みさえ、かの女の心に湧いて来るのだった。そしてかの女はその心をどう表現して好いかわからない。やはり表面には退屈な表情より現われて来ない。すると、ばあやはさすがに目敏く見て取り

「お嬢さまご退屈ですか、おやおや。じゃ一つ重光さんに唄でもうたって聴かして頂きましょう」

「いやな婆や」

かの女は口でこう云って制したけれども、こういう青年がどんな唄をうたうかそれも聴いて見たかった。

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青年の唄っている唄は花柳界の唄にしても、唄っている心緒は真面目な嘆きである。声もよくなく、その上節廻しに音痴のところがある。それを自分で充分承知していながら、自分に対する一種の嘲笑いを示すかのような押した調子の底に、医やすべからざる深い寂寞が潜むではないか。かの女の一般の若い生命を愛しむ母性が、この青年に向ってむくむくと頭を擡げる、この青年はどうかしてやらなければいけない。だがそう思う途端に、忽ちかの女は自分を顧みる。危い性分である。