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おに

鬼

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年11月、1932(昭和7)年1月~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,138 字 · 60 页

青空文庫

短刀も抜くのを忘れて、ついそのままになっていたのでございます」

「で、この藁人形のことは、誰にも話さなかったのだね」

「ヘエ、まさかこれが今度の事件の前兆になろうとは思わなかったもんでね。アア、そうそう、一人丈けこれを見た人がありますよ。外でもねえ山北の鶴子さんだ。あの方が丁度藁人形を拾った翌日、ひょっくり番小屋へ遊びにござらっしてね、わしの娘がそれを話したもんだから、じゃア見せてくれってね、この小屋を開けて中を覗いて見なすったですよ。因縁ごとだね。お嬢さんも、まさかこの人形と同じ目に会おうとは知らなかったでございますべえ」

「ホウ、鶴子さんがね、君の家へ。……よく遊びに来たのかね」

「イイエ、滅多にないことでございます。あの日は、娘のお花に何か呉れるものがあると云って、それを持って、久しぶりでお出でなさったのですよ」

さて、一応聞取りをすませると、国枝氏は藁人形はのち程警官に取りに来させるから、大切に保管してくれる様頼んで置いて、番小屋を引上げることにした。

「偶然の一致だよ。恐らく爺さんの云った様に、村の子供達のいたずらに違いない。犯人が、実際の人殺しをやる前に、藁人形で試験をしたというのもおかしいし、又、その人形を同じ場所へ捨てて置くなんて、実に愚な仕業だからね」