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おに

鬼

江戸川 乱歩

「キング」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年11月、1932(昭和7)年1月~2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,138 字 · 60 页

青空文庫

一人は殺し、一人には殺人犯人として恐ろしい刑罰を与える。実に完全な復讎ではないか。しかもその手段の複雑巧妙を極めていたこと、流石は探偵小説や犯罪学の研究家だよ」

殿村はそこで、泣き伏ている鶴子に近づき、その肩に手を当てて話しかけた。

「鶴子さん、聞いていたでしょうね。僕の云ったことに何か間違いがありますか。ありますまい。僕は探偵小説家です。君のすばらしい思いつきがよく分りますよ。今朝絹川雪子の部屋で逢った時は、君の巧な変装にだまされて、つい気がつかなんだけれど、君と分れてから、僕はハッと思い出したのです。S村でたった一度話しをしたことのある山北鶴子の面影を、その不恰好な洋髪や、厚化粧の白粉の下から、ハッキリ思い浮べることが出来たのです」

鶴子は最早や観念したものか、泣きじゃくりをしながら、殿村の言葉をじっと聞いている。その様子が、殿村の推察が少しも間違っていないことを、語っている様に見えた。

「すると、鶴子は絹川雪子を殺して置いて、その殺した女に化けていたのだね」

国枝氏が驚愕の表情をおし殺す様にして口をはさんだ。

「そうだよ。そうする必要があったのだ」