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おに
鬼
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年11月、1932(昭和7)年1月~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,138 字 · 60 页
それにいくら耄碌した婆さんだといって、雪子がそんな夜更けに外出するのだったら、一言位断って行くだろうし、それを忘れてしまう筈もなかろうじゃないか。ところが、婆さんは、あの夜雪子は決して外出しなかったと証言しているのだぜ」
流石に国枝氏は急所を突く。
「サア、そこだよ。僕がどこの国の警察記録にも前例がないというのはその点だよ」
殿村はこの質問を待ち構えていた様に、勢いこんで喋り始めた。
「実に奇想天外のトリックなんだ。殺人狂ででもなければ考え出せない様な、驚くべき方法なんだ。この間僕は仁兵衛爺さんが拾って置いた藁人形に関して、君の注意を促して置いた筈だね。ホラ、あの短刀で胸を刺されていた奴さ。あれは何だと思う。犯人がね、その突飛千万な思いつきを試験する為に使用したものだよ。つまり、あの藁人形をね、貨物列車にのせて置いたなら、一体どの辺で車上から振り落されるものだかを試験して見たのだよ」
「エ、何だって? 貨物列車だって?」
国枝氏は又しても面喰らわざるを得ないのだ。
「手取り早く云うとね、こういう訳なのだよ。探偵小説愛読者である犯人は、犯罪というものは、どんなに注意をしても、現場に何かしら手掛りが残ることをよく知っていたのだ。