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おに
鬼
江戸川 乱歩
「キング」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年11月、1932(昭和7)年1月~2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,138 字 · 60 页
流石の大宅も目の色を変えていた。
「それ見給え。土竜やなんかで、あんな全身血まみれになる筈はないよ」
「兎も角調べて見よう。片腕があるからには、その腕のついていた身体がどっかになければならない。君、行って見よう」
二人は、ひどく緊張して、何か探偵小説中の人物にでもなった気持で、さい前から妖犬のやって来た方角へと急いだ。
ポッカリと黒い、怪物の口の様なトンネルの入口が、段々形を大きくして近づいて来た。番小屋の中で手内職の編ものをしている仁兵衛爺さんの姿も見える。
と見ると、その番小屋の小半丁手前、鉄道線路の土手のすぐ側の一際深い叢の中から、三本の、或は黒く或は白い牛蒡の様なものが生えて、それがピンピン動いていた。何ともえたいの知れぬ異様な光景であったが、やがて、草に隠れて身体は見えぬけれど、その三本の牛蒡は、御馳走に夢中になっている三匹の犬の尻尾であることが分った。
「あすこだ。あすこに何かあるんだ」
大宅は、先の例に慣って、先ず小石を二つ三つ投げつけると、三匹の犬は、叢の中から、一斉にニョッと首をもたげて、血に狂った六つの目でこちらを睨みつけた。牙をむきだした真赤な口から、ボトボトとしずくを垂らしながら。