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おにももたろう

鬼桃太郎

尾崎 紅葉

「鬼桃太郎」幼年文學叢書、博文館、1891(明治24)年10月11日

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 3,422 字 · 8 页

青空文庫

桃太郎を

滅ぼさん事

疑いなし、

別に取らす

べきものありと、

自家穿ぎたりし

白虎の生皮もて

造れる褌を解きて投出し

たまえば取て戴き、

双の角に引懸け、

手振足拍子可笑く

外道舞というを舞い、

喜び勇んで退出けり、

「外道舞」の図

明日ともなりぬれば

王城より使者向いて、

鉄線の嚢に

人間の髑髏の

附焼十箇を

盛りて、

かの桃太郎が

黍団子に擬え、

之を兵粮にとて

賜わりぬ、

徂々て

鬼ヶ島の

堺に

来りたる頃、

魔風遽に颯々と吹荒み、瀑のごとくに

暴雨沃ぎて天地鳴動し、坤軸も折るるかと

想うばかりなり、

あら心地好き光景やと、少時立留って

四方を屹と見てあれば、魔王岳の絶頂に

当りて、電光の閃く裏に金色の

毒竜現われ、此方を目懸けて

箭を射るごとく飛来る、

「毒竜」の図

やあ小賢しき長虫の通力立、

寄らば目に物見せんと

力足蹈鳴らして身構うる間に、

かの毒竜舞下りて

太郎が前に蜷屈くこと十三巻、

舌を吐き首を俛れていうようは、

某は魔王岳の絶頂なる湖水に

歳久しく棲める竜王なるが、

日本の地に罷在る眷族の蛇類、

かの桃太郎が家臣なる雉子の

一類の為に、食まるること

年々その数を知らず、

いかにもして此遺恨報えさばやと

思う事久しけれど、孤独の力及び難く、