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おにももたろう
鬼桃太郎
尾崎 紅葉
「鬼桃太郎」幼年文學叢書、博文館、1891(明治24)年10月11日
N1 · 挑战 · 新字新假名 · 3,422 字 · 8 页
「鬼桃太郎」の図
むかしむかし翁は山へ柴刈に、
媼は洗濯の河にて、
拾いし桃実の裏より
生れ出でたる桃太郎、
猿雉子犬を引率して
この鬼ヶ島に攻来り、
累世の珍宝を分捕なし、
勝矜らせて
還せし事、
この島末代までの
恥辱なり、
「鬼王」の図
あわれ願わくは
武勇勝れたる鬼のあれかし、
其力を藉てなりとも
この遺恨霽さばやと、
時の王鬼島中に触を下し、
誰にてもあれ日本を征伐し、
桃太郎奴が若衆首と、
分捕られたる珍宝を携え還らんものは、
此島の王となすべしとありければ、
血気に逸る若鬼輩、
ひこひこと額の角を蠢かし、
我功名せんと
想わざるはなけれども、
いずれも桃太郎が技※に懲り、
我はと名乗出づるものも
あらざりけり、
「鬼王の触」の図
茲に阿修羅河の畔に世を忍びて、
佗しく住みなせる
夫婦の鬼ありけり、
もとは
鬼ヶ島の
城門の
衛司にて
ありけるが、
桃太郎攻入
の砌敢なくも鉄の門扉を
打摧かれ、敵軍乱入に
及びし条、其身の懈怠に因るものなりとて、
斜ならず王鬼の勘気を蒙り、官を剥がれ世に疎れ、
今は漁人となって余命を送るといえども、何日は身の罪を償うて再び
世に出でんことを念懸け、子鬼の角の
束の間も忘るる間ぞなかりける、