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おにたいじ
鬼退治
下村 千秋
「赤い鳥」赤い鳥社、1925(大正14)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,214 字 · 11 页
ところが、この男も退治に出かけた次の朝、片足半分食い取られ、おまけに鼻や耳や頬っぺたまでかみ切られて、おいおい泣きながら地べたを這うようにして逃げ帰って来た。
それを見た村の人たちは、始めはわれもわれもと鬼退治に行きたがったのに、今はだれ一人それを言い出すものもなかった。
「あの男でさえあんな目にあって来たんだから、おれなんか問題にならない。」と弱音を吐くものも出て来た。
もうだれもくじ引きをしようとはしなかった。
この時、弱虫の勘太郎が、
「だれも行けないなら、おれが行って立派に退治して来て見せよう。」と言い出した。
それを聞いていた村の人たちは、また笑い出した。
「お前に出来たら、この暑いのに雪が降るよ。」
「いやその雪が見たい。一つ退治してもらいたいもんだ。」
「お前の体じゃ鬼も食べでがあるまいが、鬼も食わないよりましだろう。一つ御馳走をしてやるさ。」
村の人たちはてんでにそんなことを言っては勘太郎をひやかした。けれど勘太郎はすました顔をして、
「馬鹿力さえあれば鬼退治が出来ると思っているのがおかしいよ。おれはそんな力はないから腕っぷしで退治しようとは思わん。