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まぞう
魔像
林 不忘
新版大岡政談
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页
「仁平!」仲間の一人を呼んで、「雉子橋御門、砲筒御蔵前の浅香慶之助殿の屋敷へ急使じゃ。慶之助殿に、四、五の若党を引きつれ、直ちにおいで下さるよう……一刻を争う場合、大迫がお待ち致しおると申し伝えろ。よいかッ。宙を飛んで行けヨ」
言葉すくなになった。それから、茫然としている一同に、
「風呂場、不浄、水口、縁先等、いま一度、戸締りを見ろ。掛金、棧、その他に異常なきやを確めるのだ。それが済んだら、各人、剣を執ってわしの座敷へ集れ、酒の支度をしてナ、今夜は徹宵痛飲、無礼講に語り且つ呑んで暁方を待とう」
何だか物騒な下知だが、呑めると聞いてよろこんだのは家来達だ。それぞれ手分けして、言いつけられた用に散らばって行く。
「長庵、参れ」
はいりかけた玄蕃が、ふり返って呼んだ。が、長庵はすっかり恐縮していて、
「イヤナニ、こちらで結構でございます」
「馬鹿ッ! そこは戸外ではないか」
「はい。外のほうが安全で、ピカリッ抜いたッと来りゃア一目散。古語にも申します。君子危きに近よらず――」
「何を愚図愚図申しおる」
「殿様、相手は、あの神尾喬之助で――?」
「なあに、彼ごとき――」