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まぞう

魔像

林 不忘

新版大岡政談

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 131,494 字 · 260 页

青空文庫

その障子が、何者かの手によってぱッと戸外から開けられたかと思うと、そこから、円い大きな物が一つ、すうウッと尾を引いて飛んで来て、どさり一同の座談の真ん中へ落ちた。ころころと横地半九郎の膝の方へ転がって行った。真っ赤な南瓜のような物で、一面に毛で覆われている。博多弓之丞が、その乱髪に手をかけて掴み上げた。ぶら提げてみると、一眼でわかった。首だ、人間の生首だ。今まで生きて饒舌っていて、勢いよく部屋を出て行った戸部近江之介の首級だ。

七

「あの、もう直きお父つぁんが帰って参りましょうから、どうぞ御ゆっくりお待ちなすって――」

お妙は、客へこう言いながら、長火鉢の埋れ火を掻き起した。そうして、火箸を扱いながら、ちらとその男を見た。

客は、若い男である。紺の※襠を穿いた膝をきちんと揃えて、窮屈そうに、長火鉢の横にすわっている。お妙は、自分だけしかいない時に、見知らぬ男の訪客を家へ上げたことが、何だか後悔されて来て、何の用だか知らないが、早くお父つぁんが帰って来てくれればいいと思いながら、炭を足し終ると、急いで茶の間を出て、台所へ来て一人ぽつねんと立っていた。