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ぎょげんき

魚玄機

森 鴎外

「中央公論」1915(大正4)年7月

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 9,866 字 · 20 页

青空文庫

玄機は出て李と相見た。今年はもう十八歳になっている。その容貌の美しさは、温の初て逢った時の比ではない。李もまた白皙の美丈夫である。李は切に請い、玄機は必ずしも拒まぬので、約束は即時に成就して、数日の後に、李は玄機を城外の林亭に迎え入れた。

この時李は遽に発した願が遽にったように思った。しかしそこに意外の障礙が生じた。それは李が身を以て、近こうとすれば、玄機は回避して、強いて逼れば号泣するのである。林亭は李が夕に望を懐いて往き、朝に興を失って還るの処となった。

李は玄機が不具ではないかと疑って見た。しかしもしそうなら、初に聘を卻けたはずである。李は玄機に嫌われているとも思うことが出来ない。玄機は泣く時に、一旦避けた身を李に靠せ掛けてさも苦痛に堪えぬらしく泣くのである。

李はしばしば催してかつて遂げぬ欲望のために、徒らに精神を銷磨して、行住座臥の間、恍惚として失する所あるが如くになった。

李には妻がある。妻は夫の動作が常に異なるのを見て、その去住に意を注いだ。そして僮僕に啗わしめて、玄機の林亭にいることを知った。夫妻は反目した。ある日岳父が婿の家に来て李を面責し、李は遂に玄機を逐うことを誓った。