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かいじんじゅうまんかん
魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編
内田 魯庵
内田魯庵『魯庵の明治 山口昌男、坪内祐三編』。同一底本的分册已合并为一书。收入:灰燼十万巻、文明国には必ず智識ある高等遊民あり、駆逐されんとする文人、二十五年間の文人の社会的地位の進歩。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,671 字 · 55 页
▲近頃は巣鴨や大塚、中野や渋谷あたりから中央の市街へ毎日通う人は珍らしく無い。逗子や鎌倉から通う人さえある。便利だと云えば便利だが、茲に不便があると云えば又云われん事は無い。電車や自働車の発達したお庇に、金のあるものが市街を離れた郊外に広大なる邸宅を構えるは贅沢だが、金の無いものが家賃の安い処へと段々引込まざるを得なくなるのは悲惨である。同じ交通の便利の恩恵を受けるにも両様の意味がある。
▲戸川秋骨君が曾て大久保を高等裏店だと云ったのは適切の名言である。
▲其上に我々は市外に駆逐されるばかりじゃない。毎日々々高価な電車税を払わねばならない。交通税共に往復九銭というのは決して高くは無かろうが、月に積ると莫大になる。我々の知人中には一家の電車代に毎月十円乃至十五円を支払う者は珍らしく無い。之だけの電車税を払うのは中産者に取っては相当な苦痛であるが、此苦痛を忍びつゝ交通の便利の恩恵を謝さねばならんのだ。
▲加之ならず、電車がイクラ迅速でも、距離が遠ければ遠いほど時間を要する。逗子から毎日東京へ通った経験のある人の咄に、汽車の時間は往復四時間だが、汽車の待合せやらステーションから目的地までの時間を合して少くも五時間若くは其以上を要すると云った。