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ろじんさん
魯迅さん
内山 完造
「図書」岩波書店、1955(昭和30)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,269 字 · 17 页
最も豊富な内容のあることを、最も短い言葉で言おうとするだけだ。けっしてあれは皮肉家ではないといった。私は英雄英雄を知るという言葉をあの時知ったですネ。
支那事変以後、魯迅さんはぼくに日本のことはなんにもめんとむかってはいわない。ぼくもなんにもいわない。由来私は政治や軍事のことは魯迅さんだけではない、誰れとも話したことがない。しかし文章では随分ひどいことを書いているのを見ることがあった。魯迅さんは人間と政治とをはっきりわけていた。ぼくのところへ来るのも前と少しも変らない。ぼくの方でも変らない。日本の軍部も、さすがに露骨な圧迫はしなかった。ときどき領事館警察の特高が、ぼくを狙う結果として、魯迅さんとの連絡を考えたものもあるらしいけれども、魯迅さんと話しているのを立ち聞きしてなにも問題がないので、しまいには来なくなってしまった。
上海で小報という小型新聞があって、それが魯迅をさかんに攻撃する。内山完造は、日本の外務省の最高のスパイだ。あいつの月給は五十万円、一年の機密費は五百万円。必要に応じていくらでも出る。それで彼はたくさんの伝書鳩を飼っている。その中で一番大きな伝書鳩は魯迅だ、魯迅は毎月十万円ずつ餌をもらっている、などと書く。