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ろじんさん

魯迅さん

内山 完造

「図書」岩波書店、1955(昭和30)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,269 字 · 17 页

青空文庫

そのときは何事もなかったのですが、魯迅に対する圧迫はますます加わり、とうとうそれ以来魯迅の名前では文章を発表できなくなった。魯迅が今までに使ったペンネームは百三十いくつあったということですが、私の知っていたのは百九です。

魯迅さんは私のところへ、ほとんど毎日来てました。大陸新邨に住居が変って、部屋が狭いものだから別のところに書斎を借りており、そこに毎日いく。午前中勉強して、大体二時か三時ごろ帰って来る。その途中でぼくのところへ寄る。しばらく漫談して帰っていくわけです。日課のようになっていました。

魯迅さんは圧迫を受けていたけれども呑気で明るかった。逮捕命令が出ておるのだから、呑気にしていてはいかん、といっても、いや大丈夫だよ。捕縛命令が出たということは、ちっと黙っておれということだよ、ほんとに捕縛する気なら命令など出さずに、だまって連れていくはずだ、心配ない、心配ない、という。

こんどは魯迅さんの家庭のことですが、先生のことだから、金の余ることはない、北京には母堂がいて、そこへ金を送らなければならないし、学生たちがしょっちゅうやって来たりするでしょう。