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はとつかい

鳩つかひ

大倉 燁子

「富士 九巻八号」1936(昭和11)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,680 字 · 30 页

青空文庫

唖の権

相手は強情に黙りこくって答えない、本田は跳りかかって、

「この野郎、何故口をきかないんだ!」

襟首を掴んで、ぐいぐいしめつけた。男は苦しそうにもがきながら、咽喉を指し、頭を垂れた。

「なんだ、貴様、唖か?」

男は哀れっぽく黙首いた。半信半疑だがとにかく、主人と二人で始末をつけようと帳場へ引立てた。

「さア、先に立って歩け! 静かに梯子段を降りろ、振り向くとこれだぞ!」

ナイフを振り翳して見せた、しかし、別段逃げ出そうとするでもなく、おとなしく命令に従い階段を降りて帳場の方へ行ったが、起きているはずの主人は雷のような鼾をかいて眠こんでいた。

「小父さん、起きてくれ、小父さん!」と喚んだが、なかなか眼を覚まさない、唖の男は両手で頭を抱え床の上に帰伏しているので、本田はちょっと気をゆるした。帳場に入って主人をゆり起そうと屈むと、

「生意気な真似をしやがる、赤星の野郎!」

という声がした、ハッと思って振り向こうとした途端、後頭をがんと破れるように殴ぐられ、それなり意識を失ってしまった。

唖の権

「気がついたかね、赤星君、酷いめに会ったなあ、僕はよもや君が本田という学生に扮けているとは思わなかった。