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はとつかい

鳩つかひ

大倉 燁子

「富士 九巻八号」1936(昭和11)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,680 字 · 30 页

青空文庫

多分犯人は本田を襲うだろうと思ったから――。何故自分の家を用いず、アパートを舞台に選んだかというのに、アパートには人が多勢いるからこっそり始末をつけにやって来るだろう。それがこちらの望む処で、一人や二人を相手なら警官の手を煩わさなくてもすむ。来るか来ないか分らない犯人を待つのに大騒ぎするのはイヤだ。僕一人でやっつけよう、と高を括ったのが失敗だった。しかし、この次ぎこそはうまくやります」と言って昨夜の出来事を簡単に語った、立松は膝を叩き、

「鼻から耳へかけての切疵、――唖、――海軍ナイフ、――唖の権だよ。やはり彼奴等の仕業だったのか」

「彼奴はほんとの唖かね?」

「偽唖さ。始末にならない野郎なんだ」

ずきずき痛む頭を押えながら赤星はふらふら起ち上り、

「居所が分ってますか?」

「分ってる。が、恐らく彼奴は鳩つかいの手先だろう。あるいは君を殺す仕事だけを請負っているのかも知れない。とにかく彼奴を捕えて泥を吐かせたら何か得るところがあるだろう」

「もう唖の権は易々とは見つかりますまい、鳩つかいは彼奴を隠すに定っているから」と云って今度は主人に向い、

「小父さんはどんな奴に殴られたんだ?」