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はとつかい
鳩つかひ
大倉 燁子
「富士 九巻八号」1936(昭和11)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,680 字 · 30 页
「気分はどうだね」
赤星はちょっと頭を下げて居ずまいを直した。
「癪に触るじゃありませんか、この漫画――」と云って、投げた新聞を拾って漫画のところを示しながら、
「吾々が生命を賭して戦っているのを、世間はちっとも汲んでくれないんだ」
「仕方がないよ。――時に、今、杉山氏を見舞って来た。鳩は何日頃放したらいいか君に訊いておいてくれ、と云っていたよ。君、ダイヤをつけてやっても大丈夫かね。どういう戦術が君にはあるんだか知らないが――」
赤星はにこにこ笑いながら、
「余り失敗ばかりするんで残念で堪らない。しかし、今度はうまくやる積りです。万事最後に話しますが、ダイヤは偽物を造ってあるから、奪われたところで大した損害にはならないんだ」と云ったが、急に話を変え、
「唖の権の居所は分りましたか?」
「居所は分ってる。お茶の水の橋の下だが、昨夜出たぎり帰らないんだ」
「そんな事だろうと思っていた。もう彼奴はそこへは帰らないでしょう」赤星はそれなり口を噤ぐんで考え込んでいたが、ふと顔を上げると少し改った口調で、
「僕はやっとの事であの鳩がどの辺からやって来たか、略々見当がついたのでこれから調査に出かけるんだ。