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はとつかい

鳩つかひ

大倉 燁子

「富士 九巻八号」1936(昭和11)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,680 字 · 30 页

青空文庫

と一人の刑事が訊いた。

「伝書鳩を飼育している家は沢山ないからな。だが、僕は最初犯人自身が鳩舎を持っているものとばかり思い込んでいて、まさか他人の鳩を盗んで使っていようとは気がつかなかった。――ある金持の若夫婦が道楽に十数羽飼っているが少し飽きたので、地所続きの『中洲の森』という淋しい森の中に鳩舎を移したところが、最近頻りに盗まれる、もう五羽もいなくなった、という噂を聞き込み早速その家を訪問して主人に面会を求め、盗まれた鳩の年齢、特殊の習慣、羽色等について委しく訊いてみるとぴったり符合していたんだ」

「頭のいい鳩つかいだね、それじゃ丸儲けだ」

「盗んだ鳩を使っていられちゃ捜査は一層困難だからね」

「だが、君、杉山氏は夕方鳩を放すんだろう? もう鳩舎に帰っていやしないかなあ、一分間に七町位飛ぶそうだから――、吾々が先方へ着いた頃には、已に犯人はダイヤを握って立ち去った後だったなんて事になりやしないかな」

「大丈夫さ。伝書鳩なら鳩舎に帰るだろうが、杉山氏の放すのは土鳩だよ。僕が買った鳩だから帰るとしたら鳥屋の店だ。いつまで待ったって『中洲の森』には帰りっこないから安心さ。